こちらは以前「落下星」さんという方がご自身のサイトに書かれた記事を転載したものです。
転載・引用を許可されておられますが、ご本人がもう亡くなられておりいつ消えてしまうかわからないため、残しておくために、ここに転載します。
http://rakkasei.syogyoumujou.com/index.html
「楽観視するとこうなる」という、悪い見本としてご紹介します。
大変な危機意識の薄さにより身をほろぼした方です。読んでいくとその楽天家ぶりに良くも悪くも驚かされます。
亡くなられた方をこのように書くのは気が引けますが、客観的に見てたいへん愚かな糖尿病患者と言えるでしょう。
しかし、彼はこうも書かれております。
私を「おろかなやつ」と笑って結構です。でも、あなた自身は
絶対に同じ道をたどらないと約束してください。本当にお願いいたします。
今回は、落下星さんが右目を失ったときのお話です。失う直前に出ていた症状についても詳しく書かれています。
彼はこの後、残った左目も問題に見舞われてしまいます。
片目失明
ここで合併症のひとつ「眼底出血の体験談」をお話します。
何回か軽い出血を繰り返しながら、いつか大出血をおこして失明にいたります。
通院していると、待ち合い室で最初に聞かれるのが「足をどうしたんですか」と言う言葉です。
まあ、義足は目立ちますからしかたがないのですが、目はほとんど他人に気付かれることはありません。
しかし、私にとっては、初めて自覚症状があった合併症でした。
出血前夜までのお話
いつごろの事だったか忘れてしまいましたが、不整脈があって、ニトロなんとかと言う薬を飲んでいた頃だと思います。
眼科では「小さい出血が見られる」と言うことで、何回かにわけてレーザーによる手術も受けていました。
そんなわけで、薬や食事療法はきちんと守っていたのですが、「食事とは食物を食べることだ。ビールやウイスキーは飲み物であって食事ではない。」と、わけのわからぬ理由をつけて、毎日、相当量のアルコールを楽しんでいました。
今になってみれば、何も知らないが故の行為でしたが(医者からの注意は受けていたのですが信用していなかったのです)一番楽しい時期でもありました。
球が見えない
蒸し暑い一日が終わり、帰宅してすぐに入浴し、食事を取りました。
テレビではナイター中継をやっていました。(野球はたいして好きではありませんので、どこの試合かは覚えていません)
そのうち、いつのまにかビールが出て来て知らない間に空き缶が増えていきました。(注;一人者です)
3缶目から4缶目に移ったときです。プルトップを開けてテレビに目をもどしたら、
「なにかおかしい。」
「そうだ。ボールが見難い。」
変だぞと思って室内を見回しても、いつもと変わりないオレの部屋。でも、なにかかおかしい。物が見難い。
ふと蛍光灯を見上げると、なんとなく赤っぽい。
訳がわからず、とりあえず手のひらで片目づつおおってみると、あらら、左目は正常なのに、右目だけにするとまっかに染まった室内。2~3回確認してからドクターの言葉を思い出したのです。
さて、どうしよう。
「そうか・・・。これが眼底出血かぁ・・・。」
我ながらおちついたもんです。
「前々から聞いててたけど、こんなんなるんかぁ。」
感心してる場合じゃないだろ。
「もう9時過ぎか。医者はやってないだろうなあ。別に命にかかわることはないし、なっちゃったものはしかたがない。」
その間、痛みは全くありません。前から注意されていた事が現実になっただけですから、けっこう他人事みたいに思えたのでしょう。
「命にかかわる事じゃないから、救急車を呼ぶ必要はないだろう。早めに寝よう。」
そして、ふたを開けたばかりのビールを
「もったいない。たぶんこれが最後の1杯だ。あとは一生酒は飲めないな。」
と言う理由で一気に飲み干し、眠ったのです。全くすくいようのない人ですね。(^_^;)
後日談・・・
翌朝、目がさめてから最初にやった事は、右目の確認です。
右目だけで見ると、前夜はまっかだった室内が、こんどはどす黒くなっています。
いや、正確にはあずき色かな?たぶん網膜の前に出た鮮血が赤く見え、固まり始めた血液がかさぶたの色になっているのでしょう。(ドクターに確認してはいません)
朝食を取り、タクシーで病院へ。普通の外来として眼科を受診。
「先生、やっちゃいました。」
いろいろと検査などがあって、一生わすれられないドクターの一言
『だめじゃないの。こういうときには救急車でもなんでもあるでしょう。出血してすぐなら薬でなおせることもあるのよ。いつも言ってるでしょう。』
がぁ~ん。そんなこと聞いてないぞ。
とりあえず、会社に電話して、1週間くらい休みをもらい、ドクターからひょっとすると薬が間に合うかも知れないとわたされた薬を持って帰宅。
視力回復せず・・・
結局1年たっても2年たっても右目はそのままになりました。
水晶体や網膜を交換する手術も可能なのですが、原因が糖尿病の場合は成功率がかなり低いとの話です。
「ま、右目がだめでも左目があるさ」
脳天気な性格の私は簡単に立ち直り、車の免許を警察に返納し、おしまい。
しかし、その後も時々やけぐいをしたせいか、数年後には「えそ」のため右足を膝から下で切断となるのですが、これはまた別のお話。時間ができたときにでもお話することにします。
いまとなっては笑い話ですが、取り返しのきかないお話でもあります。
正確に言うと、この場合も自覚症状がありました。
痛みは全くなかったのですが、時々目の前を小さな虫が飛んでいるように思えたのです。でも、それが何を意味するのかわからなかったのです。
白い壁などに向かって、片目で、なにげなく壁を見つめていると、小さい蠅のようなものが1~2匹飛んでいるように見えました。
これは眼底に出血した血が固まって黒い点にみえるものだそうです。
ただ、片目にしかみえませんから、注意してチェックしないと自覚しないことが多いのだそうです。
少し出血が多いときには、コップの中に黒いインクを1滴たらしたあとのように、小さな黒い点からインクが流れだしたように見えました。
いづれの場合も、目球を動かすと、像も動くように見えますし、焦点を変えるとピンボケで見えなくなりました。
普通に両目でみていたのでは気付きませんので、片目で無地の壁をみるようにすると、わかりやすいのです。
「眼底出血」
私の場合は正式には「増殖性網膜症」と診断されました。
なんか、難しくてよくわからない病名です。
「レーザー手術」
レーザーを使って、網膜の血管のうち、出血した場所やこれから出血しそうな血管を焼き固めてしまう手術。
この手術はまばたきしないように、上下のまぶたを固定するのが辛いです。
レーザー自体は痛くありません。レーザーを発射された瞬間は、目の前でストロボを発光されたように感じます。
危ない血管を焼き固めでいくので、何十箇所もレーザーを打ちます。
そのため、1日では体力的に無理とのことで、日をおいて何回かにわけて実施されます。
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